秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 伯爵家の当主であり、現役の内政大臣を務める祖父。なにより現国王の叔母にあたる祖母がこんな丁寧な応対をしているのだから、かなりの名門なんだろうけど。
「まぁ、そんなところです。その時してもらった不思議な施術のことが気になって、こうして訪ねてきた次第です。そうしたら、家令からちょうど伯爵がメイサ嬢から灸というのを受けていると聞き、居ても立ってもいられなくなってしまった。寝室に押しかけた無礼を許してくれ」
「ははは、よほどメイサの灸を気に入ったと見えますな」
「ええ。メイサ嬢の施術ですっかりよくなってしまい驚いています」
「それはよかったですわ。メイサの施術は本当によく効くんですの。ちなみに私はメイサにしてもらう美容鍼の大ファンですのよ」
 祖父と祖母は、せいぜい肩凝り腰痛などを想定して語っている。しかしアズフィール様がサラッと口にした『すっかりよくなって』というのは、生死にかかわる大怪我のことを言っているのだ。
 アズフィール様の発言に、私はひとり気が気じゃなかった。
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