秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「美容鍼? ……ほぅ、そんな施術もあるのですね。なにやら、大叔母様の美しさの秘密に触れたような気がしますね」
 ……え。ちょっと待って? 今、『大叔母様』って言った……?
「あらあら、バレちゃったわね」
 コロコロと笑う祖母は、前述の通り王家から降嫁した姫で、現国王の叔母にあたる。その祖母をそんなふうに呼べる人って……。
「ま、待って!! 今、お祖母ちゃんのことを『大叔母様』って……どういうこと!?」
「なんだ? もしかして、メイサはアズフィール様の身分を知らなかったのか?」
「あらあら、まぁまぁ。メイサ、アズフィール様はね──」
 祖母が朗らかな笑みで口を開く。アズフィール様はそんな祖母の言葉を遮るようにトンッと一歩踏み出して、私との距離を詰めた。
「メイサ嬢」
 アズフィール様は改めて私に向き直ると、ハンカチで包んだままの私の左手を戴くようにして、優雅に腰を折った。
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