通り雨、閃々
1. 晴天
リョウが死んだのは、三ヶ月以上も前のことらしい。
スマホのカレンダーで確認したら、その日その時間、私は歯医者にいたようだ。
私が歯石を取ってもらっている間に、リョウはこの世界を旅立った。
虫の知らせなんて何もなかった。
そんな関係でもなかった。
糸雨は夜の闇にまぎれて目に見えず、手の甲や頬に当たったときだけ存在を主張する。
赤く染まったもみじの葉も、しずかな雨粒を受けている。
晴れ男を自認するリョウは、雨の日に傘を持たずに出かけて、しっとりと濡れて戻ってくることもあった。
重くなったフードを脱ぎ、金色と黒が混ざり合った髪の毛を掻き上げて笑う。
『あー、濡れたー』
けれど、肝心なときは、予報が大雨だろうが、台風が近づいていようが、嘘みたいに晴れて私を驚かせた。
だからリョウが死んだ日は、きっとバカみたいな晴天だったんだと思う。
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