不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
うっとりした目で両手を合わせる紗那にクスクス笑いながら歩き、中華料理店の入口に下がった、煌びやかな赤い提灯をくぐる。
入ってすぐのところで斗馬さんはどこの席だろうと視線を巡らせていると、紗那が後ろからくいくいと私の服を引っ張る。
「ねぇ千帆、斗馬さまが一緒にいるの女の人みたいだけど……あの人が友達?」
「えっ?」
紗那が目線で示したのは、壁際の四人席。こちらに背を向けて座った斗馬さんと、向かいのソファ席に座っているひとりの女性が見えた。
年は二十代前半くらいだろうか。毛先を内側にワンカールさせたボブヘアに、透けるような白い肌。つぶらな瞳が清楚で儚い印象の、愛らしい女性だ。
なんで、夕飛さんじゃなくて女性と一緒に……?
「お客様、何名様でしょうか?」
斗馬さんたちに気を取られているうちに、店員がやってくる。
「に、二名です! いいんだよね? 千帆。ここで食事にして」
「う、うん」
ぼうっと立ち尽くす私に代わって、紗那が対応してくれる。
案内された席は斗馬さんたちからは離れていたが、遠巻きにふたりの様子が見える。気になってそちらばかり見ていたら、紗那が不満げに言った。