不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

「斗馬さまたちはふたりでも四人用の広いテーブルなのに、私たちは二人席なんて。ま、斗馬さまみたいな人を狭い席に案内するわけもないか。それにしても誰なのかね、彼女」
「うん……」

 斗馬さんたちを見つめたまま生返事をすると、紗那がぶんぶんと手のひらを私の前で振り「大丈夫?」と尋ねてくる。

「もしかして、また新たな浮気発覚かもって心配してる?」
「ううん、〝新たな〟たというよりは……もしかして、あの人が前の相手かなって」

 私の頭に浮かんでいるのは、またしても天使のふた文字だった。

 紗那とイタリア料理を食べに行った時、その名を冠したチーズを食べてなんとなくスッキリしたような気分になっていたけれど、当然実在の天使を退治できたわけではない。

 あの白くやわらかいチーズと、今斗馬さんが向き合っている彼女のイメージがなんとなく重なるのも、私が不安を抱いてしまう理由だ。

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