不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

 エントランスから中へ入ると、グレーや白の格調高いインテリアの並んだホールとコンシェルジュカウンターが目に入る。

 ホールからは敷地内に設けられた緑あふれる公園が眺められ、住人専用のコワーキングスペースやカフェ、コンビニも同じく一階にある。

 高層階にはバーラウンジやスパ施設、フィットネスジムが入っており、贅を尽くしたような暮らしを送れるマンションである。

 本来なら、ここで斗馬さんと甘い新婚生活を送るはずだったのに……。

「千帆」

 ふたりでエレベーターに乗り込んだところで、斗馬さんがそっと私の手を取って握った。

 とっさにパッと振りほどいたら、今度は指を絡めて強く握られる。

「放してください」
「放したらその手で今度は腰を抱くが、それでもいいなら」
「な……っ! ダメに決まってるでしょう!」
「それなら我慢してもらおう。夫婦でいる間は遠慮なく触れると言ったはずだ」

 確かにそんなこと言っていたっけ……。

 その後キスで黙らされてしまったから拒否はしていないけれど、「どうぞ」と許可したわけでもない。

< 11 / 172 >

この作品をシェア

pagetop