不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

「仕事だったんだろう、気にするな」

 ベッドの上、斗馬さんの話し声で目が覚めた。

 ぼんやり瞼を開けると、客室の豪華な照明が目に入る。と、同時に、布団に隠れた下半身がやけにだるいことに気が付く。

 そうだ、私、斗馬さんに抱かれて――。

「怒ってはいない。しかし彼女には泣かれてしまったよ。『もう一度やり直したい』と、そう言っていた」

 甘い余韻に浸っていた最中、斗馬さんの口から飛び出した言葉にドクンと心臓が重い音を立てた。

 斗馬さん、誰となにを話しているの……?

 ベッドに横たわったまま首だけゆっくり動かすと、裸のままベッドのふちに腰かけ、こちらに背を向けた状態でスマホを耳に当てる斗馬さんの姿があった。

「彼女、住む世界が違うからと、自分の気持ちを抑えつけていたんだろう。もちろん、そんな心配は無用だと言っておいた」

 斗馬さんは私が起きたことに気づかず、電話の相手と会話を続けている。

 その内容から、私の頭の中が勝手に嫌な妄想で覆いつくされていく。

< 129 / 172 >

この作品をシェア

pagetop