不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

きっと 遊び慣れている夕飛さんが、真面目な斗馬さんを悪い道へ誘い込んだんだ。

 そうじゃなきゃ、おかしい。

 私の知っている斗馬さんは、許嫁がいながら浮気する人じゃないし、妻との旅行中に他の女性と会いたいなんて口にする人じゃない。

 全部、全部あの人のせいだ……。

 責任転嫁だとわかっていながらも、胸の内で夕飛さんをののしっていたその時。

 ギシッとベッドが軋む音がして、斗馬さんが布団に入ってくる。その直後、頬にチュッと唇が触れる感覚がした。

 うっすら目を開けると、とろけそうな目をした斗馬さんが私の隣に寝そべっている。夕飛さんとの電話が終わったようだ。

「斗馬さん……」

 今起きたばかりのように装って、瞬きをする。斗馬さんはもう一度、今度は唇に軽いキスを落とし、私のウエストのくびれに軽く手を置いた。

「おはよう、千帆。といっても、まだ夕方だけどな」

 私に夕飛さんとの会話を聞かれたなんてつゆほども思っていないだろう。

 その呑気な表情が、私の胸を締め付ける。

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