不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

「ディナーまではまだ時間がある。着替えて映画でも見に行くか? それとも、カジノで散財する?」

 斗馬さんと一緒のクルーズ旅行。映画もカジノも、どちらも楽しみにしていたはずだった。でも、今の心境では……。

「斗馬さんと、部屋にいたいです」

 私はボソッと告げると、自分から彼の体に抱きついた。数時間前は、その温かいぬくもりを幸福に感じていたのに、今はどうしようもなく切ない。

「そんなかわいいことをして……また抱きたくなってしまうじゃないか」

 斗馬さんは私を抱きしめ返し、髪にチュッと口づけをする。

 言葉とは裏腹に仕草も声も優しいので、本気でそうするつもりはないのだろう。

 私がついさっきまで処女だったから、気遣ってくれているのか。それとも、彼には抱きたい女性がほかにいるからなのか。

 きっと後者なのだろうと思うと、信じられないほどの独占欲が胸の内に湧いた。

「斗馬さん」
「ん?」
「抱いてください……もう一度」

 羞恥を押し隠し、上目づかいで訴える。斗馬さんは驚いたように目を丸くし、私の顔を覗き込んだ。

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