不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
「大切な婚約指輪を、部屋に置いてきてしまったんです。もともと、年の差や身分差のある相手でしたから、身に着けるのもおこがましい気がして、眺めているだけだったんですけど……その指輪をなくしたら、ますます自分が彼に相応しくない存在になる気がして、だから、なんとしてでも取りに戻ろうと」
「指輪……事故の後、客室に残されていた所持品は持ち主に届けられたはずですが、その中にもなかったですか?」
「いいえ、ありました。でも……ダイヤモンドが、燃えてなくなってしまっていて」
婚約指輪ということは、リングの部分はプラチナと考えていいだろう。熱に強いプラチナだけが残り、ダイヤモンドは燃え尽きてしまったのか。美鶴さんのショックは計り知れない。
「それはお気の毒に。しかし婚約者なら、指輪の行方より事故に遭われたあなたの安否を気にするでしょう。無事を伝えた時、彼はなんと?」
「彼は、私が事故に遭ったことを知りません」
「えっ?」
俺は耳を疑った。婚約者が大きな火傷を負うほどの船上火災に遭ったのに、それを知らされない。そんなことあり得るだろうか。