不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
「美鶴さん、交際していた方のお名前を窺ってもよろしいですか? お節介なようですが、彼が今どうしているのか、美鶴さんの話を聞いて私も気になってしまって……私の知り合いにもパイロットがいますので、少し調べられたらと」
「そんな、ご迷惑じゃ……」
「指輪を取りに戻ろうとしたあなたを引き留めたのは私です。責任を取らせてください」
少々強引な理屈だと自分でも思ったが、美鶴さんは少し考えて「わかりました」と頷いてくれた。
そしてバッグからスマホを取り出すと、彼と一緒に写っている写真を表示させ、見やすいように俺の方に向けてテーブルに置く。
ずいとテーブルに身を乗り出した俺は、しばらく自分の目を疑い、瞬きを繰り返した。
美鶴さんと一緒に写っている、美形ではあるがどこか軽薄そうな男は、俺のよく知る友人と瓜ふたつ。
そういえば、夕飛の女性関係が派手になり始めたのはあの事故が起きた後から――。
「服部夕飛さんという方です。今もパイロットの仕事を続けているとは限りませんが……」
「続けています」
美鶴さんの言葉を遮るようにして、断言する。