不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
表示されていたのは服部夕飛の名で、千帆のそばを離れがたかった俺はベッドに腰かけて電話に出た。軽い挨拶の後、夕飛が申し訳なさそうに言う。
《悪かったな、斗馬。この間、せっかく時間作ってくれたのに》
「仕事だったんだろう、気にするな」
《美鶴、怒ってた?》
「怒ってはいない。しかし彼女には泣かれてしまったよ。『もう一度やり直したい』と、そう言っていた」
夕飛が沈黙する。まだ迷いがあるのだろうか。
《俺より斗馬が先にその台詞を聞いたってのが腹立つけど……ホッとした、サンキュ》
気が抜けたようなため息の後、夕飛が穏やかな声で言った。
この調子なら、どうやら夕飛も美鶴さんと同じ気持ちのようだ。
「彼女、住む世界が違うからと、自分の気持ちを抑えつけていたんだろう。もちろん、そんな心配は無用だと言っておいた」
ついでに飛行機好きの馬鹿だとも伝えたが。
口には出さずにそんなことを思い、微かな笑みを浮かべる。