不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

「んっ」
「かわいい声だ。……もっと卑劣な反則を犯したくなってくる」

 相変わらず耳のそばにある彼の唇が、吐息をたっぷり含ませた声で妖しげな言葉を吐く。

 背後から私を抱きしめていた彼の手が、パジャマの上からゆっくり体の輪郭をなぞるように動きだす。男性経験のない私でも、これから斗馬さんがしようとしていることがなんとなくわかった。

 でも、流されてはダメ。今の気持ちではまだ、斗馬さんにすべてを委ねることなんてできない。

 私は体を這う彼の手に自分の手を重ねると、思い切ってその皮膚をつねった。

「痛てっ」
「調子に乗りすぎです」

 慌てて手を離した斗馬さんを睨み、ぴしゃりと告げた。

 斗馬さんはつねられた手の甲をさすりながら苦笑する。

「ごめん。強引だったな」
「はい。……反則はせめてキスまでにしてください」
「キスはいいのか?」
「べっ、別にしてほしいわけではありません!」

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