不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
ムキになって否定すると、斗馬さんがおかしそうにクスクス笑う。
その屈託のない笑顔は昔から私を魅了してきた斗馬さんそのもので、胸がきゅっと締めつけられる。
なにも知らずに彼を好きでいられたあの頃の自分が、ちょっと羨ましかった。
先ほどのやり取りが効いたのか、夫婦の寝室にひとつしかないベッドにふたりで入った後、斗馬さんは私と一定の距離を置いたままとくに接近してこなかった。
これなら心穏やかに眠れそうだ。
「なぁ千帆」
「はい」
目を閉じる直前、斗馬さんに呼び掛けられて彼の方を向く。斗馬さんはしばらく天井を見つめてなにか思案していたけれど、やがてこちらを向くと、ゆっくり首を左右に振った。
「いや、なんでもない。おやすみ」
「おやすみなさい」
なにを話そうとしていたんだろう?
少し気になったけれど仕事疲れもあったため、目を閉じると間もなく眠りに落ちた。