不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
「これ、全部千帆が? 大変だっただろう」
「今日は休みだったのでそうでもないですよ。飲み物はどうしますか?」
サラッと言った千帆が、冷蔵庫を開けながら俺を見る。
理想の妻を具現化したような立ち居振る舞いに、思わず視線が釘付けになる。
千帆のそうした所作は決して自然に身についたというわけではなく、彼女自身の努力の賜物。それを知っているからこそ、ますます彼女が輝いて見える。
「喉が渇いているから、まずはビールをもらおう。千帆も付き合ってくれるか?」
「はい、少しなら」
千帆はよく冷えたグラスと瓶ビールをお盆にのせて運んでくると、目の前でグラスに注いでくれる。彼女の分は俺が注いでやり、軽くグラスを合わせて乾杯した。
ビールでのどが潤ったところで、さっそく立派なエビフライをナイフで切り分けた。
手作りらしいタルタルソースをつけ、口に運ぶ。噛んだ瞬間、サクッと衣が弾ける音がした。
「……こんなにうまいエビフライは初めてだ」
「本当ですか? よかった」
「俺の好物ばかり、よく揃えたな」