不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
感心しながら食べ進めていると、千帆がなぜだかクスクス笑う。
……なにがおもしろいんだ?
咀嚼を止めて片眉を上げた俺に、千帆が悪戯な笑みで言う。
「斗馬さんの好きな料理って、お子様ランチに入っているものばかりだからわかりやすくて」
「……なるほどな。悔しいが否定できない。両親からもよく味覚が幼稚だと言われる」
苦笑しながら、またひと切れエビフライを口に入れる。
嫌いな食べ物はとくにないが、俺の好みはわかりやすい味付けなのだ。
ハンバーグ、ラーメン、カレー、ナポリタン、コロッケなど、小学生が好みそうな定番料理で、不覚にも喜んでしまう。
「料理を作る側としては大変助かります」
「そう? じゃ、また作ってもらおうかな。愛情たっぷりで」
「そ、それは……約束できかねます」
たわいのない会話なら乗ってくれるのに、少しでも言葉に甘さを含ませると、途端に千帆の顔が強張る。
今は信頼を再構築している最中なのだから、仕方がない。
少々苦い気持ちが胸に広がったが、ビールを呷って飲み下した。