不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
夕陽は、国内最大手の航空会社に勤めるパイロット。ゆったりと大海原を進む船を愛する俺に対し、夕飛はどんな遠い国にも短時間で連れて行ってくれる飛行機に愛着を持つ。
『ぜったいにふねのほうがかっこいい』
『はー? ひこうきにきまってるだろ』
幼稚園児の頃から、それぞれお気に入りの船と飛行機のおもちゃを片手に火花を散らしていた俺たち。性格も合わないのに、なぜか大人になってもつかず離れずの関係だった。
『見ろこの帆船。骨組みの一本一本までが計算しつくされた設計だ』
『帆船とか古っ。そっちこそ、この流線型の翼見ろよ、綺麗でため息出るだろ』
お互いにいい大人だが、複数の同じ模型店を憩いの場としており、偶然鉢合わせては意味のない張り合いをする。
それくらいがちょうどいい関係だったはずだが、電話の向こうの夕飛は、俺をしつこく合コンに誘った。参加予定の同僚の都合が悪くなり、人数がひとり足りないそうだ。
夕飛は昔からモテる男だが、昔から女性関係が派手だったわけではない。詳しいことまで聞いていないが、真剣に交際していた女性にフラれてから自棄になったらしい。
それから頻繁に女性との食事会や飲み会を開催しているが、誘われたのは初めてだった。