不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

《許嫁がいるのは知ってるけど、まだ結婚前なんだからいいじゃん》
「お前の物差しで軽はずみに言わないでもらいたい」
《相変わらず石頭だな。一途なのは結構だけど、他の女を知るのもひいては許嫁さんのためになるよ? 女心って難しいんだ》
「同じ女性だからといって、考え方は十人十色。許嫁の千帆を知るには、本人と向き合うのが一番に決まっている。誘うなら他をあたってくれ」

 きっぱり断って、電話を切る。無駄に疲れたなと思いながら、スマホを胸のポケットにしまったその時だ。

「見ーつけた!」

 今しがたまで電話越しに聞こえていた夕陽の声が、すぐそばで聞こえた。

 ぎょっとして辺りを見回すと、夕飛の姿を見つけるより前にずしっと肩に重い腕が乗った。

 無理やり肩を組んできた張本人が、至近距離でニッと笑う。

「夕飛……!」
「お前の会社のそばで待ち伏せててよかった~。さ、行こう。姫たちが待ってる」
「俺は行かないとあれほど……!」
「複数の男女で楽しく飯食って酒飲むだけだって。今回予約したイタリアンの店、ブッラータがめちゃくちゃうまいぞ」

 内緒話のように囁かれ、俺の耳がぴくっと反応した。

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