不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

 ブッラータは、幼稚な舌の持ち主の俺をも唸らせる、イタリア原産のチーズ。

 袋状のモッツァレラチーズの中に、たっぷりの生クリームと細かく切ったモッツァレラチーズが詰まっており、この上なくクリーミーで濃厚な味わいが楽しめる。

 数年前、イタリアへ出張で一度口にしてからすっかり虜になっていたのだが、その賞味期限はなんと四十八時間。国内での流通量も少なく、なかなか口にできる機会がなかった。

「……食べ物で釣るとは卑怯な」
「いや、だからさ。斗馬はブッラータ食べ終わったら適当に帰っていい。だからここはさ、長年友人の俺に協力してよ。頼む、この通り」

 両手をパチンと合わせた夕飛に拝まれてしまうと、ますます断りづらかった。

 異性と食事を共にすることは仕事でも珍しくないので、堅く考えず適当に過ごせばいいか。

 ブッラータを味わったらすぐ帰るつもりで、俺は仕方なく夕飛についていった。

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