不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
東京駅にほど近いビルの一階。『ラ・カゼッタ』というイタリア料理店の個室で向かい合った女性たちは、丸の内にオフィスを持つ大手企業で働くOL三人だった。
男性陣の方は、夕飛と彼の同僚パイロット、そして俺。
愛想を振りまく理由もないので、俺は淡々と注文役に徹する。加えてあからさまに話しかけないでほしいオーラを出していたのだが、夕飛が余計な爆弾を投下した。
「ねえみんな知ってる? こいつの家、昔財閥だったの」
「えっ? 財閥って?」
「第二次世界大戦後に解体されたんじゃないんですか?」
「でも、確かに剣先財閥って、聞いたことある……!」
女性たちの視線が一気にこちらに集中し、居たたまれなくなる。俺の口からなにか説明しなければならない空気が漂い、俺は渋々口を開く。
「まぁ、財閥は解体したが、企業グループとしての影響力は今でも多少ある方かと」
「おいおい、お前の親父さんの会社、年商五兆円超えだろ? お前のところだって多少と言うには派手すぎるくらい稼いでんじゃないの?」
「……夕飛」
こんなところで具体的な数字を出さなくてもいいだろう。
じろりと夕飛を睨みつけたが、すでに手遅れだった。