不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
花嫁支度を終えた私はドキドキしながら、新郎の控室へ向かっていた。
上品なロングスリーブのウエディングドレスに身を包み、シニヨンにまとめたセミロングの髪にティアラが乗っている。
控室の前まで来るとドアが微かに開いていて、斗馬さんと別の男性が話す声が聞こえた。
ドアの隙間から覗いてみると、一八五センチ身長のある斗馬さんと同じくらい背が高く、甘い垂れ目が特徴的な男性が彼の隣に立っていた。
私も顔見知りである斗馬さんの友人、服部夕飛さんだ。
『斗馬もとうとう結婚か……。もっと遊んでおけばよかったとか思ったりしない?』
『まさか。夕飛に誘われて行った女性との飲み会も、断ればよかったと後悔したくらいだ』
『大げさなヤツだな。結婚前のことなんだから気にするなよ』
夕飛さんは軽く笑っているが、寝耳に水の話に私は衝撃を受けた。
現在三十二歳の斗馬さんは剣先重工の後継ぎとして、幼い頃から厳格な教育を受けてきた。
その重圧の中でも周囲の期待に応えるために努力を重ね、現在は剣先重工のグループ企業『剣先造船』の社長を務めている。