不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
せっかくだから自宅に千帆を招き、このチーズを使ったディナーでも振舞おうか。
独り暮らしのマンションに帰り着いてから彼女に電話をしてみたが、電話の向こうの千帆は迷わず俺の誘いを断った。
《ごめんなさい。私たちは許嫁同士ですけど、結婚前の身で独り暮らしのご自宅に上がるのは、はしたない気がするので》
「食事をするだけでも?」
《……ごめんなさい。融通の利かない性格だと、自分でもわかっているんですが》
残念だが、千帆らしいとも思った。真面目な彼女は今どき珍しいほど貞操観念が高い。たとえ許嫁の俺が相手でも、易々と隙を見せてくれないのだ。
しかし、結婚したらそんな彼女を自分の手で変えていける。千帆が女になる瞬間を見られるのは俺だけなのだと思うと、とてつもない優越感が胸を満たした。
「わかったよ。家の中で口説くのは、結婚するまで我慢だな」
《そんなことしなくたって、私は斗馬さんのものですよ?》
「それは許嫁だからという意味だろう? そうじゃなくて、もっと心の奥深くで、きみと繋がりたいんだ」