不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
女性との会話はあまり得意でない俺が、こんなに必死で口説き文句を並べ立てるのは、相手が千帆だからだ。未来の妻のためなら、どんな愛の言葉も惜しむつもりはない。
《斗馬さん》
「ん?」
《できればそういったセリフも結婚するまで我慢なさってください。……ドキドキして眠れなくなってしまいます》
電話の向こうのか細い声を聴き、照れているのだと察する。
真っ赤になってスマホを耳に当てる千帆を想像し、身悶えそうになるのを堪える。
「仕方がないだろう、本心なんだから」
《もう……っ、だから、やめてくださいってば》
ますます恥ずかしがる千帆に、その後もひとしきり甘い言葉を囁いて、通話を終える。
なんてかわいいフィアンセだろう。胸の内で呟き、ひとりで口もとを緩ませた。
* * *
今思えば、気持ちの面ではあの時が一番の蜜月だったかもしれない。
ようやく千帆との結婚が叶ったのに、彼女は結婚式の直前に合コンの件を知ってしまい、離婚を突きつけてきた。
決して浮気をしたわけではないが、純粋な千帆のことだ。俺がそういった席に参加しただけでも許しがたいだろう。