不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
「今日は美味しい料理をありがとう。家の中も綺麗で気持ちがいい。掃除も頑張ってくれたんだな」
やわらかな彼女の髪を撫でながら、改めて感謝を伝えた。
しばらく黙り込んでから顔を上げた千帆は、なぜかちょっぴり不満げな表情だ。
「斗馬さん、不自然に優しすぎると、ご機嫌取りのようでうれしくないです」
「ご機嫌取り?」
「浮気をした男性が、罪悪感をごまかすために花やケーキを買ってくるあれです」
なるほどなと思う反面、千帆の口からそんな俗っぽい話が飛び出したのが意外だった。
世間知らずのお嬢様のようで、俺が思うより色々と知っているのかもしれない。
「確かに、今の俺はきみと離婚したくない一心だからな。それを下心と取られてしまったら、言い逃れできない。でも、その根底にきみへの純粋な愛情があることを忘れないでほしい。離婚したくないのは、千帆……きみを愛しているからだと」
「斗馬さん……」
「今はまだ全面的に俺を信用することはできないかもしれない。それでも、俺はこうしてきみに愛を囁くことをやめない。約束の日を迎えるまで、ずっと」
千帆の顔を両手で包み込み、まっすぐに目を見て告げる。
彼女は困ったように長い睫毛を伏せ、静かにこくんと頷いた。