不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

 斗馬さんのことを『斗馬さま』と呼んで崇めるのは彼女だけではなく、実は世間一般の女性たちの多くが、彼をそう呼んでいる。

 旧財閥家の御曹司、そして剣先造船の若き社長という肩書きに加え甘いマスクの持ち主である斗馬さんは、雑誌などのメディアに引っ張りだこ。世間で王子様のように扱われているのだ。

 でも、対外的に見せるキラキラした笑顔の裏で、斗馬さんはいつも苦悩と努力を続けている。それを知っているのは許嫁の自分だけだという事実が、密かに誇らしくて自慢だった。

 過去形になってしまうのが、切ないけれど……。

「いや、実はそんな順調でもないのよね」
「ちょっと、その謙遜は嫌味じゃない?」
「ううん、謙遜じゃなくて本当に。今度、ご飯でも食べながら相談に乗ってくれない?」

 廊下を歩きつつ、小声で紗那に漏らす。私と斗馬さんは政略結婚だから、離婚を考えているなんて軽々しく周囲に漏らすことはできないが、相手が紗那なら別。

 離婚予定なのに家に帰ると斗馬さんの甘々攻撃が待っていて、どう対処したものか困っている現状を、そろそろ第三者の誰かに相談したかったところなのだ。

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