不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
まったく入る気になれず立ちすくんでいると、ふと後ろに誰かの気配を感じた。
「亮太。どうだ、話は聞けたか?」
乱暴な言い草に振り向くと、そこにいたのは先ほどカウンターの中にいた男性だった。
思い切り眉間に皺をよせ、険しい顔をしている。
この人、店のマスターじゃないの? 佐藤くんとどんな関係?
「親父、そう焦るなよ。話はこれからだから、店に戻ってて」
佐藤くんの放ったひと言に驚愕した。
この人が、彼のお父さん? つまりこの店は彼の実家……?
「大事なことだ。ちゃんと確認してくれよ」
「わかってる」
男性が部屋の前を離れると、佐藤くんが静かに扉を閉め、私を見下ろす。
「ごめん、親父、顔は怖いけど悪い人じゃないんだ。うち、父子家庭だからちょっと過保護なところがあって」
やはり、彼は佐藤くんの父親で間違いないようだ。そしてふたりとも私に聞きたいことがあるみたいだけれど……。
突然自分の身に降りかかった状況が呑み込めず、ただ困惑して佐藤くんを見る。