不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
妹さんを思うがゆえだとしても、罪のない人間に恨みを抱くのは間違っている。佐藤くんだって冷静に考えればわかるはずだ。
「……やっぱり、千帆ちゃんも剣先にうまく飼いならされてんだな」
佐藤くんは、嘲るように鼻を鳴らして笑った。
「えっ?」
「剣先家の奴らは、金にものを言わせてなんだってやる人間だ。第三者機関の調査結果だろうがあてにならない。船上火災の現場に居合わせたのも、きっと偶然じゃない。剣先の名を世間にアピールするためだったんだろう。だって、剣先斗馬はその事故での対応が評価されて、専務から社長になったんだ。話が出来すぎてる」
違う……違う。斗馬さんはそんな人じゃない。
私は佐藤くんに歩み寄り、語気を強める。
「佐藤くんは彼を誤解してる。会社のトップに立つのは、そんな簡単じゃない。事故対応への評価は、斗馬さんを社長たらしめた要素のひとつでしかないはずよ」
「ずいぶん熱心にかばうんだな。どうせ政略結婚だろうから、もっとドライな関係かと思ってたけど……マジで惚れてんだ、剣先斗馬に」
からかうような視線を向けられ、不覚にも頬が熱くなる。