不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
自分も浮気の件で斗馬さんに腹を立てているはずなのに、佐藤くんに彼をばかにされるのは、許せなかった。
それって、本心では斗馬さんをまだ想っている証拠? いや、そうとは限らない。長年の情があるだけよ、きっと……。
自問自答していると佐藤くんがゆっくり身を屈め、顔を近づけてくる。
「千帆ちゃんがなにも知らないのは残念だけど、これで終わりじゃないからね。ここで諦めたら、なんのために真宮クルーズに入社したのかわかりゃしない」
「え?」
「剣先斗馬の許嫁であるきみに近づくため、それまで勤めてた会社を辞めて、真宮クルーズの中途採用試験を受けた。今年で三回目だったけど、ようやく念願かなって受かったんだ。もっときみのことを利用させてもらわないとね」
不敵な笑みを浮かべ、佐藤くんが言い放つ。ぞくりと背筋に冷たいものが走り、体が強張った。三回も採用試験を受けていたなんて初耳だ。
「私をどう利用しようというの……?」
「別に、怖がる必要はない。ただ、妹の件の真実を知りたいんだ。剣先斗馬も、奥さんの前ならボロを出すかもしれない。だから、事件について探りを入れてほしい」
「探りを入れると言ったって、さっき私が話したことが真実――」
反論の途中で、佐藤くんがチッと舌打ちをする。