不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

「何度も言わせないでもらえる? 俺が知りたいのは、剣先家に都合のいい作り話じゃない。あの事故で本当はなにがあったのかだ。妹の火傷は火災に巻き込まれた被害者の中で一番重傷。けど、妹の部屋は甲板に近くて避難しやすい場所にあったし、避難指示に従わないような性格でもない。だから、納得できないんだ」
「妹さん自身はなんて?」
「事故でパニックになって、避難経路を逆走したって言ってる。でも、大多数の人間が正しい経路で避難してるのに、その流れを無視して逆走する馬鹿いるか? 絶対になにか秘密があるはずなんだけど、俺や親父が問いただしても妹はずっと黙ってる。きっと、剣先斗馬自身か会社に不都合な事実があって、それを隠蔽する取引でも持ち掛けられたんだ」

 斗馬さんが、そんな汚い取引をするとは思えない。でも、佐藤くんの妹さんがなにか秘密を抱えているというのは確かに気になる。

 それを明らかにすれば、佐藤くんも納得して前に進めるかもしれない。そしてなにより、斗馬さんや彼の大切にしている仕事について誤解されたままでいるのが嫌だった。

「わかった。佐藤くんに協力する」

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