不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

「夕飛さんとあなたの会話を盗み聞きしたんです。私との結婚前に、女性とお戯れになっていたそうですね」

 顔を上げた私は、きっぱりとそう言って斗馬さんを睨んだ。

 彼はハッとしたように目を見開き、悔やむように眉根を寄せる。

「聞いていたのか……すまない。その件に関しては、申し開きのしようもない」
「私を裏切ったんですね」
「千帆……」

 斗馬さんはこちらに手を伸ばしかけ、けれど思いとどまったようにその手を膝に置く。

 否定も言い訳もしないということは、天使との一夜はやはり真実なのだ。

 胸が切なく軋んで、目頭が熱くなる。

「本当は今すぐ離婚したいですが、お互いの両親が納得しないでしょう。ですから、一カ月くらいは我慢して結婚生活を送ろうと思いますが、その後離婚してください」
「待ってくれ、一カ月は短い。せめて半年……時間が欲しい。その間に、きみの信頼を取り戻せるよう努力するから」

 切実な目をした斗馬さんが、私の顔を覗く。

 長い間想いを寄せてきた相手からの懇願に、つい絆されそうになる。

 それでも、今は許したくない気持ちの方が強い。本気で私の信頼を取り戻したいなら、半年だなんて悠長なことを言わないでほしい。

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