不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
「歩けなくなっても俺が介抱するから問題ないが、明日も仕事だろう? くれぐれも二日酔いにならない程度にな」
「わかりました。介抱と称して、斗馬さんに変なことをされたら困りますしね」
そう言って彼を睨みつけると、斗馬さんは一瞬キョトンとしてから私の顔をジッと睨んだ。
「……そんな冗談を口にするとはきみらしくない。やはり酔っているな。炭酸水を頼もう。それとも、ガスなしのミネラルウォーターがいいか?」
「まだ大丈夫ですよ。肉料理もワインと一緒に楽しみたいですし」
「知らないぞ、介抱と称して俺になにをされても」
あきれ気味の斗馬さんに忠告されるが、私はふるふると首を横に振った。
予想外に頭がくらくらし、もしかして結構酔っているのかもと自覚する。
でも、酔っているからこそいつも言えないことが伝えられる気がする。勢いで言ってしまえ。私はそう思って斗馬さんをまっすぐ見つめた。
「そんな冗談を言いながら、本当はなにもしないって知ってます。斗馬さんはそういう真面目な人です」
「千帆……」
斗馬さんが、眩しいものを見るように目を細める。テーブルの上で交錯する視線が徐々に熱を帯び、私の心を焦がす。
しかしその直後、唐突に襲ってきた切なさで、瞳が潤んだ。