不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
早く斗馬さんが眠ってくれますように。私は祈るようにそう思っていたけれど、次の瞬間布団が擦れる音がして、あろうことか斗馬さんに後ろから抱きしめられてしまう。
背中にぴたりと密着したぬくもりに、心臓も呼吸も止まりそうだった。
「千帆……」
微かな声で呟いた彼は、私の首筋に軽く唇をあてる。体が跳ねてしまいそうになるのはなんとか堪えたが、これはどういう状況だろうとパニックになる。
ドクドクと脈打つ鼓動が、さっきまでの何倍もうるさい。
「どうしたら、きみの悲しみや切なさを取り除いてあげられるのだろう……」
やがて、耳元でひとりごちる彼の声が聞こえた。それから、ウエストに回された腕が、ますます私を抱く力を強める。
「愛してる」
続けて聞こえたのは、頼りなく掠れた、それでいて切実さの滲んだ声。
眠っている私に伝えても意味がない。彼だってそれがわかっているはずなのに……。
「俺はあきらめない。絶対に」
自分の覚悟を確かめるように言った斗馬さんは、最後に私の耳たぶに長いキスをして、そっと離れていった。全身が灼かれたように熱くて、胸が苦しい。
斗馬さんの過ちを許すより前に、彼の甘い言葉に、大きな体の温もりに溺れてしまいそうだ。