不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

 しばらくして、彼のいる方から規則正しい寝息が聞こえてきたので、私はおそるおそる上体を起こし、仰向けに眠る彼を見つめた。

 天井を向いて尖った鼻先、黒々として長い睫毛、理知的な薄い唇……。彫刻のように美しいその寝顔を眺めていると、やるせない思いがこみ上げる。

「私だって……私だって、本当は、愛しています」

 ずっと押し込めていた胸の内を吐露して、私は彼に口づけを落とした。

 斗馬さんが起きている時に堂々と言えない自分を卑怯だと思う。愛しているなら、今すぐ許してあげればいいのにとも思う。

 でも、彼を前にするとなぜだか素直になれないから、今はまだ、こんな形でしか伝えられない。

「ごめんなさい……」

 微かな声で呟き、布団の中に戻る。

 ほんの少しこぼれた涙が、枕に沁み込んでいった。

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