不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
甘すぎるキスに溺れて◇離婚成立まで68日
フレンチレストランで食事をした日以来、また斗馬さんとは普通に接するようになり、七月になった。
結婚してから一カ月。つまり、離婚を決めるまであと二カ月ほどだけれど、まだまだ結論は出せない。
そして迎えた、七月十一日。夜に紗那との約束を控えたその日の仕事は、私の企画したツアーで巡る造船所の下見だった。
複数の造船所を回る予定になっているが、まず始めの見学先は、剣先造船。別に身内びいきで斗馬さんの会社を紹介したいわけではなく、日本一の造船技術を誇る剣先造船でどうやって船ができるかを、単純に多くの人に見てほしいと思ったからだ。
「すご……俺、船を作るところを間近で見るのって始めてだ」
「スケールの大きさに圧倒されるよね。何回見ても惚れ惚れしちゃう」
ヘルメットをかぶった私と佐藤くんは、巨大な作業用クレーンを見上げて感嘆する。
梅雨の晴れ間が広がる空のもとで私たちが訪れたのは、先日リニューアル工事が完了したばかりの横須賀の工場。
海に向けてなだらかな傾斜をつけられた船台、その上にそびえる作業用クレーン、吊り上げられた鉄鋼の板。ここでは主に大型船を建造しているだけに、目に入る何もかもが巨大だ。
そのほかに、各部品を製造する工場、組立工場、塗装工場など、あらゆる設備が、東京ドーム四つ分の広さの敷地内に揃っている。