不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
「では、各工場の方にご案内します」
ヘルメットと作業着姿で私たちを案内してくれる男性担当者が、私たちを建物の方へと促す。
仕事とはいえ私も佐藤くんもちょっぴり観光気分で、担当者の後についていった。
約三十分の見学を終えた後、組み立て工場内にある、机と椅子の並んだ会議室に案内された。
ここで、ツアーに組み込む具体的な見学内容や一回で案内できる見学者数など、企画の細かい部分を打ち合わせするためだ。
「お飲み物をお持ちしますので少々お待ちください」
「恐れ入ります」
用意された席に着き、佐藤くんとふたりでひと息つく。担当者が戻るまで、会議室の窓から見える工場内の様子をぼんやりと眺める。
「あのさ、千帆ちゃん」
「ん?」
佐藤くんに呼び掛けられ、振り向く。彼は落ち着きなく鼻を擦って話しだした。
「勝手なことして申し訳ないんだけど、妹に千帆ちゃんのこと話したんだ。俺のため……っていうと語弊があるけど、同僚があの火事のことを調べる手伝いをしてくれたって」