不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
「そうなんだ。別に、私は大丈夫よ」
「でも、妹はそれでもダンマリで、俺、腹立ってきちゃってさ。昨日の夜、『俺や親父、他人なのに協力してくれた同僚の気持ち無下にすんなよ』って、一方的に怒鳴っちゃったんだよね。だからうぜぇ兄貴って思われたかもしれなくて……はぁ。今日は家に帰りづらい」
言い終えると同時に、佐藤くんはがくっとうなだれた。妹さんに嫌われたか心配になって落ち込むなんて、それこそいいお兄ちゃんの証拠ではないだろうか。
「そんなに心配しなくても、佐藤くんの気持ちはちゃんと妹さんに伝わってると思うけど」
「いや~、でも、兄貴なのに大人げなかったというか」
「佐藤くんみたいに自分のことを気にかけてくれるお兄ちゃんの存在、私は羨ましいよ? うちは兄弟がいないから」
「千帆ちゃん……」
顔を上げた彼を励ますように、笑顔で「うん」と頷く。佐藤くんは少し困ったような顔をした後、意を決したように口を開く。
「ありがと。あのさ、俺」
佐藤くんがなにか言いかけたその時、会議室の扉が開いた。