不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
担当者がお茶を持ってきたのだろうと思いそちらに視線を向けると、そこに立っていたのはなぜか斗馬さん。三つ揃いのストライプスーツは工場の風景とまったく合わないが、そのぶんいつもより輝いて見える。
「よく来てくれた、千帆」
「斗馬さん? どうして……」
仕事中に会うことなんて滅多にないから、照れくさくて頬が火照ってしまう。
「今日、きみがここを訪れるというのは聞いていたから、仕事を調整して寄ってみた」
仕事を調整といったって、剣先造船の本社オフィスは丸の内だ。かなりスケジュールに無理が生じているのではと心配になる。
「そんな、お忙しいのにわざわざ」
「今日の夜は、友達と食事に出かけてしまうんだろう? だから、昼間のうちにひと目顔を見ておきたくてな」
涼しい顔をしてなんて恥ずかしいことを言うんだろう。ますます頬が熱くなってくる上、そんな私を佐藤くんがジッと見ていて居たたまれない。
「千帆、そちらは?」
「あっ、同じ営業企画部の佐藤くんです」
「……どうも」