不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

「佐藤くん、ごめんなさい。私――」

 彼を見つめ返し、告白をきっぱり断ろうとしたその時。

「千帆?」

 心に想い描いていた斗馬さんの声がして、私はパッと振り向いた。路肩に停まった車の方から、斗馬さんが怪訝そうに歩み寄ってくる。

 なんとも気まずいタイミングだが、迎えに来てくれたらしい。

 どうしよう。佐藤くんに返事をしたいけど、この状況では……。

 私は斗馬さんと佐藤くんの顔を交互に見て混乱する。

「きみは、昼間千帆と一緒にいた……」

 斗馬さんがそう呟いた後、三人の間に気まずい空気が流れる。しばらくして沈黙を破ったのは佐藤くんだった。

「千帆ちゃん、俺、あきらめないから」
「えっ?」
「明日からも引き続きよろしく。じゃ、また」

 こちらの反応を待たず、佐藤くんは私たちに背を向け歩きだす。

 い、今の宣言はいったい……?

「千帆」

 斗馬さんの低い声に呼ばれ、ビクッと肩が跳ねる。ドキドキしながら彼の横顔を見上げたけれど、斗馬さんは私を見ずに、前を見据えたまま言った。

「聞きたいことがある。とりあえず車に」

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