不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
あからさまに怒気を感じさせる言い方ではなかったけれど、彼を纏う空気がぴりっと鋭い緊張感に満ちているのがわかる。
佐藤くんのことをなにか誤解しているのだろうか。ちゃんと説明すれば、やましいことはないってわかってくれるよね……?
とぼとぼと彼の後ろを歩き、停まっていたスポーツカーの助手席に乗り込む。
車内が重苦しい空気に包まれる中、車を発進させた斗馬さんがさっそく私に質問する。
「食事をしていた友達っていうのは、さっきの彼なのか?」
「いえ、違います。一緒に食事をしていたのは女友達の紗那で、彼もたまたま同じ店で食事を……」
「たまたま?」
とっさに嘘をついた私の心の揺れを感じ取ったかのごとく、斗馬さんがすかさず追及する。落ち着いた声音だったが心臓が縮こまるような感覚がして、私は正直に首を左右に振った。
「いえ、すみません。彼は会社から私と紗那を追いかけてきたようで、知らない間に近くの席で食事を」
「それで、帰りがけ千帆がひとりになったところを狙って近づいてきたのか」
「そう……だと、思います」