不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

 膝に置いたバッグの上でギュッと重ね合わせている手に、汗がにじんでくる。

 やましいことはないのだから堂々としていればいいのに、いつもと違って微かに刺々しい空気を纏う斗馬さんに、つい萎縮してしまう。

「彼の『あきらめないから』という発言、前後関係がわからないが、俺への宣戦布告に聞こえたのは勘違いか?」

 赤信号で、車が止まる。斗馬さんの瞳が久しぶりにこちらを向いたけれど、なにを思っているのかはわからない。

「おそらく、勘違いではないかと」

 あの流れではそう考えるのが自然だ。わざわざ斗馬さんの前で口にしたのも、なにかしらのアピールだったのだろう。

「俺からきみを奪うつもりということか。……忌々しい」

 斗馬さんらしくない物騒な発言に、おそるおそる運転席の彼を見る。

 前の車のブレーキランプを浴びて赤く染まった顔に、隠し切れない苛立ちが浮かんでいる。鋭い眼光で前方を見据える姿はぞくりとするほど美しく、恐ろしくもあった。

 佐藤くんに嫉妬しているの……?

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