不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

「斗馬さん?」

 呼びかけたと同時にパッと信号が変わり、斗馬さんの表情にも幾分か冷静さが戻る。再び運転に集中しつつ、話を続けた。

「千帆。俺はきみに離婚を突きつけられてからというもの、夫婦の再構築を目指して必死で努力している。もちろん、その努力は約束の時を迎えるまで絶え間なく続けるつもりだ。何人たりとも、それを邪魔する者は許さない。彼にもそう伝えるんだ」
「はい……。わかりました」

 佐藤くんは気を悪くするかもしれないけれど、彼の気持ちにはどうしたって応えられないのだ。嫌われてもいいから突き放して、そのぶん斗馬さんと向き合おう。


 斗馬さんは私を迎えに来る前に入浴を済ませたそうなので、私も帰宅後すぐ、シャワーを浴びることにした。

 着替えを取るために寝室に入り、クローゼットを開ける。そして、いつものワンピースパジャマや下着を出していると、ドアがガチャっと開いて斗馬さんが現れた。

 彼は無言でこちらに向かってくると、クローゼットの前でいきなり私を抱きしめた。持っていたパジャマと下着が、パサッと床に落ちる。

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