不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
愛を伝えて守る? 甘い言葉に聞こえるけれど、どういう意味だろう。
思考を巡らせようとしたその時、ちゅ、と軽く唇が触れ合う。ドキンと胸が鳴り、触れた部分が火照ったように痺れる。
「離れている時も千帆が俺の気配を纏えるように、一緒にいる時は息をつかせないほど愛したい。俺の愛情で体も心もコーティングされた千帆には、他の男も手を出せないだろう?」
斗馬さんの愛情で、コーティング……。
思わず頭に浮かんだのは、とろけたチョコレートを頭の上からかけられて、全身茶色く染まる自分の図だった。息をしたら肺までチョコレートに蝕まれて、苦しくて、でも甘い。
チョコレートまみれでもがく私に、確かにほかの男の人は近づけないだろう。
「……なぁ千帆」
斗馬さんに呼び掛けられ、甘い想像の世界から戻ってくる。首を傾げて発言の続きを促すと、彼はお互いの額をコツンと合わせて言った。
「そろそろ、反則の条件を変えてくれないか? いっそ、撤廃でもいい」
「えっ?」
「きみのすべてに愛情をコーティングするのに、キスだけでは届かない場所がある。まだ、そこには触れさせてくれないか?」
涼やかな斗馬さんの目が、ねだるような甘さを含んで細められる。