すべての世界で、キミのことが好き❤~告白相手を間違えた理由
 車が停まった。
 俺たちは、外に出た。

 砂利道にうっすらと雪が積もっている。
 目の前にある、木でおおわれた道を抜ければ、あの丘にたどり着く。

 下見は三日前の昼にすでに終えている。
 記憶と変わらない景色だった。

 そして今、空は雲ひとつなく、星が見えている。
 
 あの時、俺が感動した景色。
 それを見た結愛は、どんな反応をするのだろうか。

 父さんは、車で待ってくれている。
 俺たちは手を繋ぎながら進んだ。

 小道をついに抜けた。

 夜に来たのはあの日以来だったから、実は俺も今日、この景色を久しぶりに見るのが楽しみだった。

 楽しみだったけれど、結愛の気持ちの方が気になりすぎて。景色を見る前に、今横にいる結愛の横顔を見つめていた。

 どう感じるのか、喜んでくれるのか。
 ずっと、この計画を思いついた時から考えていたこと。

 ――結愛は、どんな顔をするのだろう?


 彼女の目が潤んできた。
 そして、泣いた。

 ここまで反応してくれるとは考えていなかったから、ほっとしたを通り越して、俺も涙が出そうになった。

 でもここで泣いたらダメだ!
 まだやることがある。

 この景色を堪能してから、プレゼントを渡すんだ。っていう計画だったのに。

 なぜかすぐに渡してしまった。
 順番が狂ったのは緊張のせい。

 俺があげたプレゼント、気に入ってくれるだろうか。彼女が袋を開ける瞬間もドキドキした。

 結愛が袋を開けた。
 反応がよかった!

 ――よし! 

 心の中でガッツポーズをした。

 小さい頃、気に入りすぎて家に持って帰りたいと思い、結愛にも見せたいと思っていたこの景色。
 星と雪さえもあの時みたいで。

 今、その景色の中にいる。
 そして隣には、結愛がいる。

 『しあわせ』とはこういう気持ちなのか。
 生きてきた中で一番の幸せ。

 何も出来ずにいたけれど、自分を変えたくて、勇気を出して良かった。

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