すべての世界で、キミのことが好き❤~告白相手を間違えた理由
 年が明けた時、一通のメールが届いた。

『未来の俺へ 今、中学一年生の俺は、結愛と、仲良かった頃に戻りたくて。でもどうしたらいいのか、分からない』


 えっ?

 この文章が、自分のスマホに届いた時、一瞬夢かな?と思った。

 でも、考えていたらこれは現実で。過去の自分から送られてきたものだと思った。だって、ちょうど中学一年生のこの時期、俺も同じことを考えていたから。

 俺が送ったメールは、頭の中で描いた通りに、スマホを持ち始めた時の俺に届いたのか。

『メールありがとう。気持ちと行動がしょっちゅうバラバラになっちゃうし、なんでも自分で解決しようとしてしまう俺だよね。悩むよね。いきなり元に戻るのは難しい事だから、少しずつ気持ちを結愛に話したりして、心を近づけて、焦らないで少しずつ進んでいけば良いと思うよ』

 当時の自分は、そんなことまで考える余裕なんてなかったけれど、過去の自分に対してならアドバイスが出来た。

 とても不思議な気分。

 最近読んだ本の中に、こんな内容の物語があった。

 “ 見えないけれどもいくつもの並行の世界があって、それぞれの世界には同じ人物がいて、それぞれ別の選択をし、違う生き方をしている。しかも、この世界が別の並行の世界に影響を与えられたり、与えたりすることが出来る” という内容の漫画。

 過去の自分とメールをやりとりしていたとしても、今の生活は何も変化がないし、未来の俺からメールが送られてきた記憶は全くない。

 だとしたら、別の世界の過去の自分にメールを送ったことになるのか?

 複雑な気持ちだ。
 同時に考えた。

 もしも、結愛が、陸に告白をしなかったら、過去の俺が、ふたりを邪魔したらどうなるのだろう。

 ――結愛の隣にいられた?

 今の自分はもう、結愛と連絡をとる勇気もないし、隣にいることは無理なわけで。

 メールのやりとりしている“ 自分 ” には後悔して欲しくなかった。
 そして、結愛の隣にいられた人生はあったのか、あったらどんな感じなのかが知りたくなった。
 
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