すべての世界で、キミのことが好き❤~告白相手を間違えた理由
 途中、いつもと違う散歩コースを歩いてみた。
 近所で一番広い公園に行ってみる。

 この公園は、遊具もあるし、奥に行くと運動出来る広場やランニングコースもある。

「そういえば、さっき言ってた体力錬成、しないの?」

「あ、あぁ。大丈夫」

 彼は、私とマロンの歩く速さに合わせて歩いている。ゆっくりな感じ。

 本当は走ったりしたいのかなぁ?

 公園の中を歩いていると、見覚えのある人がサッカーボールを蹴っていた。

「あ、陸くんだ!」

 思わず名前を呼んでしまった。私が陸くんの名前を出すたびに悠真が嫌そうな顔をするから、避けていたけれど。横を見ると、やっぱり嫌そうな顔をして、彼は陸くんを見ていた。

「おーい!」

 陸くんが私たちに気がついて、手を振ってきた。私は控えめに振り返す。

 悠真は……手を振らずに無言でズボンのポケットに手を突っ込んでいた。

 陸くんは手を振った後、再びボールを蹴る練習をしていた。

「サッカーしていると、余計にかっこいいな……」

 心の中の言葉を呟いてしまった。
 それに気がついた時にはもう遅かった。

 こっちをにらむと、陸くんの方へ悠真は足早に歩いていく。

 えっ? 何このやばい雰囲気。喧嘩始めたりしないよね?

 怖くなって、マロンを抱っこしてギュッと抱きしめる。

「対決だ!」

 えっ? 何? 喧嘩始めるの?

 私にまで届かない声で何かを話しているふたり。


 まずは、ゴールの場所を決めてるっぽい。

 この広場には木が沢山生えている。木と木の間をゴールにしたらしい。ちなみに木の後ろはネットがあるから、ボールは道路へ飛び出したりしない。

「これで、三分、時間を計って!」

 悠真のスマートフォンを渡される。
 画面はタイムウォッチモード。

「どんな対決するの?」
「僕がゴールを守って、悠真がゴールを狙う。三分間守りきれば、僕の勝ち!」

 陸くんが説明してくれた。

 広場の真ん中でボールを囲むふたり。


 まず、悠真がボールを蹴って、陸くんがボールを奪おうとする……。陸くんが奪ったボールを再び悠真が奪おうとしている。それを繰り返す。

 ふたりがサッカーをしている姿ってなかなか見る機会がなかったけれど、ふたりともとてもキラキラしていてカッコイイ。

 どっちを応援して良いのか分からない。

 陸くん?
 悠真?

 今どっちかっていうと、陸くんが優勢って感じかな? 悠真は少し焦っているようにもみえる。

 残り三十秒……。ふたりとも頑張っている。このままじゃあ、どっちか負けちゃう。押され気味の悠真が負けちゃうのかな?

「悠真、頑張れー!」

 負けそうな悠真を応援した。

 マロンも「ワンワン」って。一緒に応援しているみたい。

 悠真がボールを奪った。
 勢いが増した。

 勢いよく木と木の間にボールが滑り込む。

「わっ!! すごい!」

 私は思わず叫んだ。

 ピピピ……。

 スマートフォンの音が鳴る。
 
 ゴールを決めた瞬間の悠真!
 凄くキラキラしてた。

 私の視線は、悠真を追っていた。


「ふたりとも上手だね! すごくよかったよ!」

 私がそう言うと、陸くんが微笑む。
 悠真が満面の笑みでこっちを見た。

「結愛、ありがとう!」

 しかも悠真からなぜかお礼を言われる。

「えっ? 私、何もしてないよ?」
「結愛のお陰で勝てたんだ!」
「……?」

 悠真がもう一度ニッコリと私を見ながら微笑み、陸くんと話し始める。

 私はマロンと目を合わせて首をかしげた。マロンも真似して首をかしげていた。

 急に対決を始めて、どうなっちゃうのかなと思ったけれど、喧嘩じゃなくて本当に良かった。

 私じゃあ、彼らの喧嘩をとめられないし。
 対決をしているふたりが楽しそうで、羨ましいなとも思った。


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