公爵の娘と墓守りの青年
「……何故、賛成なのですか?」
ウェルシールは平静を装い、静かにトイウォースに尋ねた。
「クウェール王家とウィンベルク公爵家は昔から交流が深い関係です。初代国王の妹がウィンベルク公爵家に嫁いだことがきっかけで、時折、王家に嫁いだり、公爵家に嫁いだりしているのです。そのような間柄なので私はイスト殿の意見に賛成したまでです」
柔らかな笑みを浮かべ、トイウォースは告げた。
貴族の中で強い権力を持つトイウォースが賛成したことで、今まで「自分の娘を!」と薦めていた貴族達が一斉に賛成に回った。
その変わり身の早さに、イストは嫌悪を込めた目で貴族達を見る。
「……本当に長いものに巻かれるのが好きだよな、貴族って奴等は……」
呆れ果てた声で呟き、イストは小さく息を吐いた。
そんな家臣の言葉を聞きながら、ウェルシールはどう決断するべきか悩んでいた。
正直なところ、まだ結婚する気はなく、今は公務などしなければいけないことが山積みとなっている。
その中で一番、厄介なのがウェルシールの向かい側に座るトイウォースだ。