公爵の娘と墓守りの青年
ウェルシールが提案している話し合いにも応じないトイウォースの動きが未だよく分からない今、賛成していることを素直に受け取ってもいいのだろうか。
トイウォースの賛成の裏に何かがある気がしてならない。
ウェルシールは表情を変えずに息を吐いた。

「では、このようにしたら如何でしょうか。ウィンベルク公爵の姪御様が見つかり次第、婚約者として陛下とお付き合いをし、見つからなかった場合はもう一度、候補を探すというのはどうでしょうか」

どう切り返せばいいのか悩むウェルシールに、エルンストが助け船を渡した。
静かにウェルシールを見つめていたトイウォースはエルンストに目を向けた。

「――良い案ではないでしょうか。私も賛成です。ウェルシール陛下はどうお考えでしょうか」

黒い目を細め、トイウォースは笑みを浮かべた。

「……良案だと思います。私も異存はありません。ですので、姪殿が見つかりましたらすぐに連絡を下さい、公爵」

小さく頭を上下させ、ウェルシールは静かに告げた。

「承知しました、ウェルシール陛下」

マティウスは頭を垂れ、若き国王の命に従った。
そのやり取りをトイウォースは静かに見つめた。その目は先程までの柔らかな笑みではなく、冷やかな色を宿していた。


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