公爵の娘と墓守りの青年
エルンストの一言に、ウェルシールは頬を膨らませた。
先程までの年相応に見えた若き国王と同じ人物なのかと疑ってしまうくらいに子供っぽい仕種だ。

「まだ僕は結婚する気はないし、そんな暇はないよ」

「その割にはカエティスの都にいる墓守りに会いに行くのですね」

にっこりと笑みを浮かべ、エルンストは皮肉たっぷりに言った。

「だって、カイさん、伝説の守護騎士のカエティスかもしれないんだよ、エルンスト」

その言葉を耳にしたイストは思わず咳き込んだ。

「カエ……いやいや、墓守りが守護騎士、なんですか?」

イストは咳き込みながら、呟いた。
驚いたウェルシールとエルンストはイストに目を向けた。

「イスト、大丈夫?!」

「だ、大丈夫です……。お茶が詰まっただけなので……。どうぞ、気にせず、続きを」

お茶を飲み直し、イストはウェルシール達に先を薦めた。

(……危なかった……。危うく、隊長のことを言いかけた……)

心配そうにウェルシールはしばらく見つめていたが、イストが更に先を薦めたのでエルンストに向き直った。

「えーと、とにかく、僕はまだ結婚する気はないよ。いずれはしないといけないけど。だから、他の貴族達に口を挟ませないように、イストやエルンストがウィンベルク公爵に話を振って、公爵に姪殿のことを言わせたのも分かるけど……」


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