公爵の娘と墓守りの青年
「……分かりました。カエティスの都の墓守りのことも調べます」
諦めたように、エルンストは頷いた。
弾けるように顔を上げ、ウェルシールはまじまじとエルンストを見上げた。
しばらく呆然とエルンストを見ていたが、すぐさま満面の笑みになった。
「ありがとう、エルンスト」
「お礼はまだ早いですよ、ウェル様。まだちゃんと墓守りの謎が解かれていないのですから」
そう言って、エルンストは優しく目を細めて小さく微笑した。
「……隊長の謎って、何だろうな……?」
自分の主君と弟のやり取りを聞きながら、イストは眉を寄せて呟いてしまった。
慌ててイストは口を押さえて、ウェルシールとエルンストを見た。
うっかり声に出したその呟きは誰にも聞かれることもなく、ウェルシール達は別の話題に移っていた。
イストは安堵の息を洩らして椅子から立ち上がり、ウェルシール達に近付き、会話に入ることにした。
時を同じくして、大きな敷地を有する屋敷で金色の髪、黒い目の青年は腕を組んで眼前の男を見据えていた。
「……つまらない意思表示をするなと私は言ったのだが、理解が出来ていなかったようだな、ワルト伯爵」