公爵の娘と墓守りの青年
彼の食べっぷりはとても見事なもので、約一週間分あったパンが見る見る減っていく。

「あ、あのー……?」

黙々と食べる男に、リフィーアは恐る恐る声を掛けてみた。
リフィーアの声に気付き、パンを食べる男の手が止まり、やっと顔を彼女に向けた。
男と目が合う。彼の透き通った水のような青色の右目と意志の強い鋼のような銀色の左目が、不思議そうにリフィーアを見つめた。

「……ん?」

リフィーアが呆然と男の持つパンと顔を交互に見ていることに気付いた。

「……あ。もしかして、俺、気付かずに君のパンを食べちゃった……?」

パンを食べて元気を取り戻した男は、耳に心地よい低い声と共に苦笑した。

「それもあるんですけど、あの……倒れてましたよね、さっき。どうして倒れてたんですか?」

約一週間分の食糧と両親に供えるために買ったパンよりも、先に気になったことをリフィーアは尋ねてみた。

「それが話せば長くなるんだけど……」

首を緩く振り、男は手に持っていた食べかけのパンを平らげた。
そして、上目遣いで男はリフィーアを見た。
彼女はじっと男を見つめて話すのを待っている。
仕方なさそうに頭を掻き、男は口を開いた。

「……さっき、カラスがいなかった?」
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